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和 裁 内海 春子 うつみ はるこ [内海和洋裁所] 「着物文化」をどうつたえていくのか 和服は日本の伝統的な民族衣装です。内海さんは「着物文化」と呼んでいます。その文化をどうしたら次の世代に伝えていけるのか。内海さんのテーマです。その一環で、和紙でつくった着物、リバーシブルな着物なども提案しました。和裁という技術や技能だけでなく「着る」という人間の営みそのものを考えているのでしょう。
プロフィール [PROFILE]
生年月日…昭和11年(1936年)3月30日
出身地……静岡県掛川市
所在地……[内海和洋裁所・内海和裁高等職業訓練校]
       浜松市中区和合町154-15

・昭和33年(1958年)東京家政大学卒業
・昭和33年(1958年)〜37年(1962年)、静岡県立高等学校の2校で家庭科の専任講師として勤務
・昭和37年(1962年)〜39年(1964年)、西遠女子学園の家庭科の教諭として勤務
・昭和45年(1970年) 内海和裁教室 開設
・昭和57年(1982年) 内海和裁高等職業訓練校 開校

◆平成14年(2002年) 静岡県知事優秀技能者賞
◆平成16年(2004年) 厚生労働大臣表彰 
◆平成17年(2005年) 叙勲 瑞宝単光章
◆平成18年(2006年) 静岡県技能マイスター
静岡県技能マイスター制度とは
静岡県内で優れた技能を有し、全国的な技能競技大会での優勝経験や後進の指導・育成に尽力し、多大な貢献をしている現役の技能者を、有識者等からなるマイスター認定審査会が「静岡県技能マイスター」として認定し、 その活動を通して技能者の社会的評価を高めていくことを目的としています。

・・・・・和 裁とは・・・・・
和服を制作することやその技術のこと。和裁は和服裁縫の略語。
大正時代の頃までは、裁縫といえば和裁のことであったが、洋裁と区別するために、和服の裁縫のことを和服裁縫、または和裁と呼ぶようになった。現在「裁縫」という言葉は和裁・洋裁のどちらも含む総称である。裁縫のことを「仕立て」ともいう。
技術伝承に三つの基本方針
内海さんは、静岡県知事が認定する和裁のマイスターであり、内海和洋裁所の所長でもあります。
和裁の技術をどう伝えていくかについて、三つの基本的な方針を持っています。①指導手法を高める②技を正しく伝える③コスト意識を高める―です。

まず①と②です。和裁は手縫いが基本です。手縫いですから、縫い針の運び・運針の技能習得が第一条件です。技能も言葉では表現できないもの、「暗黙知」です。職人たちの勘やコツはうまく説明できません。内海さんは「洋裁、婦人服など関連する業種とも連携して、基本的な技能を統一することや、分かりやすく解説した教材・教具が必要です」と思っています。

③については、卓越した職人の作品は高価になりがちです。普及のことを考えると、安売りは安易な方法でうなずけませんと前置きして「安くて高品質な物、よろこばれる物」を提供するのも熟練した職人の努めです」と、コスト縮減の必要性も訴えています。
和紙の和服。リバーシブルな和服も考案
2007年に沼津市で開かれた技能五輪世界大会の時、内海さんに「外国の人たちにも見てもらえるような和服の出展を」という依頼が来ました。

内海さんは、人と違ったものをつくりたいといろいろ考えて、紙衣(かみころも)、紙布(しふ)をヒントに、和紙で和服をつくろうと思いつきました。和紙を友禅染にして仕立て上げました。今まで例のない試みでした。男物は紋付・羽織・袴。女物は重ね打ち掛けをつくりました。和紙がいくら強くても布ほどの強さはありません。紙が裂けないように、また、すべて手縫いでしたから、慎重に縫い上げました。たいへん骨が折れる作業でしたが、和紙を縫製する「技」は運針の慎重さと正確さが大変重要であることから、「布」すなわち「着物」の縫製技能の向上に大きな成果があることに気づき「和紙の着物はおもしろい世界が生まれた」と満足したそうです。

リバーシブルの和服も発表しました。訪問着と無地色、黒紋付と訪問着などの組み合わせで、一着でさまざまな機会に着ることができて「今まで以上に和服が身近になる」と言います。帯ももちろんリバーシブルです。
ひと手間、ふた手間かける
内海さんは、着やすい着物をつくるために「ひと手間、ふた手間」かけています。

体形による襟幅やダキ幅の微妙な調整、最後のアイロン掛けでの襟元の掛け具合など、そうでないと見栄えはもちろんのこと、肝心の着やすさにつながらないのをきらうからです。お客さまが着ることだけをイメージするのではなく、自分が着たらどうなるかも思い浮かべます。すべての作業工程にもれなく目を行き届かせるのが、プロだと思っています。
お弟子さんの仕立てにも、きびしい目を注ぎます。「仕上げは、わたしがやらないと気がすまない」と少し苦笑いです。

内海さんは洋裁の技能も持っています。和裁と洋裁、両方の手法をつかって、新しい和服の世界を生み出そうとしています。
インタビュー [INTERVIEW]
Question   この仕事を始めたきっかけはなんですか? Answer 家庭科の教師になりたかったことがきっかけです。
しかし、和裁、洋裁の技能・技術を教えるためには、学校で習得した技能範囲では充分ではありません。縫製の技能をなんとか高め、生徒に指導できるような力の必要性を悟り、自分なりに勉強と縫製技術・技能を繰り返し練習しているうちに「技」の深さがわかりはじめ、いつのまにか自分がこの世界にのめり込んでしまったというのが実情です。
Question   この仕事につくためになにが一番必要だと思いますか? Answer 最も必要なことは「ものづくりが大好き」ということに尽きるかと思います。
根気よく「技」を習得していれば「つくる喜び」や「着る楽しさ」がわかってくるものです。同時に「縫製技能」を突きつめようとする熱意が自然と生まれてきます。もうひとつ欲を言えば「根気強さ」が備わっていれば最高の技能者・技術者になれます。「暗黙知」といわれるように技能は「見て覚え、体験して身につく」ものです。
「ものづくり」が好きでないと根気も続かず技能も身につきません。
Question   この仕事をしていてよかったことはなんですか? Answer 自分が教えた生徒の「着物」をお客さんが褒めてくださる時が大きな喜びです。同時に自分が褒められた気持ちになるとともに私自身の大きな励みになります。「教え方に間違いがなかった」「よく頑張ってくれた」と心から生徒に感謝できる時がこの仕事を続けて良かったとつくづく感じます。

さらに、国家試験に合格したと生徒から喜びの報告を聞く時も、自分のことのようにうれしく、苦しかったことも吹っ飛んでしまいます。

縫製の「技」は深く終わりが見えません。辛いこと、苦しいこともありますが、喜びもまたたくさんあります。この喜びを糧に今後とも縫製の技能・技術の改善に努め「着物」の文化に貢献できれば最高の喜びです。
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