静岡県内で、ものづくりに携わる職人・技能者や関連イベントをご紹介
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左 官 萩原 多助 はぎわら たすけ [個 人] 偶然の出会い 東京で、鉄筋コンクリート構造での左官を学びたい。萩原多助さんは、18歳のとき、頼るあてはありませんでしたが、意を決して汽車に乗りました。となりに乗り合わせた人が、萩原さんの手を見て「いい手をしている」と声をかけられました。左官の親方でした。萩原さんはこの親方のもとで、本格的に修行をはじめました。いまの萩原さんにみちびいた偶然の出会いでした。
プロフィール [PROFILE]
生年月日…昭和7年(1932年)1月11日
出身地……静岡県藤枝市
所在地……静岡市駿河区馬渕

左官業を営む父親を手伝うため16歳のとき高校を中退。18歳から21歳まで東京で修行をして藤枝に帰郷。27歳のとき静岡市で萩原左官店を開業。

◆平成08年(1996年) 静岡県優秀技能者表彰
◆平成15年(2003年) 厚生労働大臣認定の卓越技能章(現代の名工)
◆平成16年(2004年) 黄綬褒章
◆平成18年(2006年) 静岡県技能マイスター(しずおかの匠)
静岡県技能マイスター制度とは
静岡県内で優れた技能を有し、全国的な技能競技大会での優勝経験や後進の指導・育成に尽力し、多大な貢献をしている現役の技能者を、有識者等からなるマイスター認定審査会が「静岡県技能マイスター」として認定し、 その活動を通して技能者の社会的評価を高めていくことを目的としています。

・・・・・左官とは・・・・・
左官とは、建物の壁や床、土塀などを、こてを使って塗り仕上げること。
日本家屋の壁は、竹などを格子状に編んだ小舞下地(こまいしたじ)の両面に、藁(わら)を混ぜた土を塗り重ねる土壁、消石灰・麻等の繊維・糊でつくった漆喰(しっくい)が用いられるが、それらの仕上げに欠かせない職種であり、また、かつては土蔵の外壁やこて絵など、技術を芸術的領域にまで昇華させる職人も現れた。
技の秘訣
『技術は眼で盗む。数を重ねて身につける』。 
昔から、職人の間で言い伝えられてきた、いわば職人の格言です。萩原さんもそうやって左官の技を学びました。でも、これは今も変わらないし、なにも職人の世界だけの格言ではありません。スポーツ、音楽、演劇、絵画でもおなじです。うまい人を見て、おなじようにできるまで何回も何回も反復練習する。もちろんコーチをしてくれる人とめぐり合うことも必要ですが、はじめはじょうずな人の技を見てまねることが第一歩です。

「自分の仕事に精進してすすめば、仕事の経験年数ではなく、どれだけこだわってマメに勉強していくか、技を身につけようと修行する中身の濃さになってきます。それが職人として大切なことです。そうやっていけば、こだわりも生まれるし、こだわれば、いい仕事、いいものができるようになります」。これは萩原さんが体験を通して得た、技の上達の秘訣でもあります。
人に負けない得意分野を持つ
左官工事の施工方法は数が多い。荒壁塗り、漆喰塗り、土物仕上げ、プラスター塗り、モルタル塗りなど。道具の種類も多い。鏝(こて)にも、黒打ち鏝、あげ裏鏝、大津通し鏝、かく鏝などがあります。

萩原さんは、左官は下地から仕上げていくのが本来だと、思っていますが、「この施工法は絶対に人に負けないといったもの、二つ三つの技術を身につけることが大切」つまり得意分野をもつことです。「まわりとおなじことをやっていると、特徴のない“左官屋“になってしまう」ことを気にかけてきました。

鏝板(こていた)の上にのった塗り材をやわらかくこねて、鏝にすくって壁に張りつけ、真ッ平らにさらさらと壁に塗りつけていく。自然に手が動いて、意志をはたらかせているとは思えないような手際のよさです。鏝使いをどれほど訓練したか、萩原さんの努力がうかがいしれます。こういった基本的な技能を身につけたうえで「たくさんある施工法のなかから、得意分野をのばしていくことが大事」だと、鏝をやわらかく動かしました。
運命の出会い
萩原さんが左官を始めたのは戦後間もないころ、建築も従来の木造から、鉄筋コンクリート構造が主流になるころでした。静岡県内もその傾向があらわれていました。ところが当時、静岡県内には鉄筋コンクリート構造での左官技術を身につけた職人は多くいませんでした。
萩原さんは、東京の建築現場で技術を身につけようと、頼るあてはありませんでしたが、上京を決意、その東海道線の汽車でとなりに偶然乗り合わせた男性が「いい手をしているな。君は左官屋だね。東京であてがなければ、うちに来なさい」と声をかけました。この男性は東京の建築現場で手広く活躍している、榛原出身の左官の親方でした。偶然の出会いでした。

萩原さんは、この親方のもとで左官の技術と技能を多く学びました。萩原さんの手を見て、左官の素質を見抜いたこの親方の目はまちがっていませんでした。それにこたえた萩原さんもたしかな職人でした。
出会い・縁は不思議な力を持っています。
インタビュー [INTERVIEW]
Question   この仕事を始めたきっかけはなんですか? Answer 父が左官の仕事をしていたからです。
手に職を持つ面白さがあったため。

現代の名工 技能功績の概要
漆喰工法について卓越し、特に漆喰壁、生子壁、屋根漆喰などの工法に精通している。平成七年に静岡市に駿府城東御門が再建された際には、左官工事の世話役(職長)に選ばれ、見事な左官工事を完成させた。さらに金型定木の考案により作業能率の増進にも貢献した。
Question   この仕事につくためになにが一番必要だと思いますか? Answer やる気です。
器用さも必要ですね。
それから、つねに初心を忘れないことです。
Question   この仕事をしていてよかったことはなんですか? Answer お施主さんに評価されることです。
そのおかげで今までやめようと思ったことはありません。
Question   ≪施工したもののご紹介≫ Answer 駿府城東御門復元・白漆喰壁・軒裏など
たとえ経験を積み、腕のいい左官職人と言われるようになっても、めったに機会のない城郭建築となると、話は別です。駿府城東御門復元(平成8年完成)の白漆喰壁、軒裏などの左官工事に携わった萩原さんも「不慣れな仕事でした。荒土だんご、手打ち塗りかえ、白漆喰塗りなど7工程を経て完成しました。若い職人たちと力を合わせ、やりがいのあるしごとでした」と、振り返りました。駿府城の南東角にある東御門は、巽櫓(平成元年完成)つながって、堅固な守りの実戦的な門で、戦国時代の面影を残し、白漆喰壁は威圧感とともにうつくしさもあり、堀の水に映えています。「いいものをつくりたいとずっと思っていましたから、できあがった時は、ほんとうにうれしくて、感動しました」
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